最近、あまりにも物価の高騰が激しいのが、世界中で問題になっています。日本だけではなく、まさに世界中で問題になっているわけです。
なぜ、物価が全体的に高くなったかというとガソリンの供給量の世界的な不足が原因です。英語圏をネットサーチすると、数年前まで1ガロン(約3.8リットル)が3ドル以下だったのが今は7ドル近くなっているなんていうネットミームを見かけます。
市場の自己調整
しかし、みなさんも気になったかと思いますが、経済学の教えはどうなったのでしょう?
“え、なんのこと?”と思われた方もいたかもしれません。ここで言っているのは、自由市場において需要と供給が合意して行われる取引は、必ず適正な価格で行われるという経済学の黄金律のことです。
市場の自己調整というやつですね。
この市場の自己調整が疑われるようになりつつあります。特に、経済の停滞が問題になっている日本では“市場の自己調整って本当に起きるの?”という声を上げている知識人も増えています。
まず、この市場の自己調整ってなんでしょうか?買手はなるべく安く取引を要求します。売り手はなるべく高く取引を要求します。
買手からすれば1000円より100円の商品を求め、さらに100円より10円の商品を求めます。そして、売り手としては10円よりも100円で買ってくれる人を、100円よりも1000円で買ってくれる人を探すわけです。
しかし、売り手としてはいくら儲けたいとは言え、あまりにも値段が高すぎると誰も買ってくれないので仕方なく値段を下げます。買い手としても、いくら安く買いたいとは言え、安すぎる値段の商品を探し続けるわけにもいかないから手ごろな値段で落ち着きます。
なので、ジュースならだいたい100円から150円くらい、誰でも買ってくれて商売をする人にも手元に利益が残る、それくらいの値段で売買されるわけです。
経済学の需要と供給の原理ですね。
物価高騰の原理
しかし、この経済学の黄金律が物価の高騰で崩れつつあるようです。日本だけでなく世界中で。
まず、なぜガソリンの値上がりが物価高に影響するのでしょうか?
ガソリンが値上がりすると、当然ながら輸送業はそれまでよりも値段を上げなければいけません。今までは、1000円で進めていた距離を2000円使わなければいけないわけですから、それを補うために値上がりするのは当然と言って良いでしょう。
そして、輸送業が値上がりするとほとんどの商品は値上がりします。ほとんどの商品は、例えば食品ですが、原材料などは港や畑から輸送してもらう必要があります。
輸送量が上がれば、生産者も港から各地に輸送を依頼する人も、より高い値段で取引しないと採算は取れないわけです。
原材料が上がるので、全ての商品の値段が上がるのは当然のことなのですが、なぜガソリンの値段は下がらないのでしょう?
上手くいかない需要と供給の原理
需要と供給の競争原理はガソリンにはまるで当てはまっていないように見えますし、実際にその通りで当てはまっていないのです。
ガソリンの値段はまるで安くならないし、まるでガソリンを安くしてほしいという需要が無視されているように感じます。そして、実際にその感覚は当たっていると言えます。
しかし、なぜ競争の原理によってガソリンの価格は安定しないのでしょう?
理由は、ガソリンが私たちの生活にとって必需品のために、競争による値段の変動が起きにくいのです。
例えば、明日からガソリンの値段がさらに上がったとしましょう。
当然ながら、馬や飛脚に頼るわけにはいきません。“ガソリン高いから、馬にするわ。”とはなりません。高いけれども、それに代わるエネルギーが存在しないので使い続けなければいけないわけです。
ガソリンのみならず、生命や生活の必需品であるサービスや商品ですが基本的に買い手は提供された値段で手に入れるしかありません。
ガソリン代が高すぎるから他の何かに頼もうということは現実的ではないわけです。
そうすると、こういう人が出てくるかもしれません。
“確かに買い手はそうかもしれないけれど、売り手は安く売ることで競争相手よりもガソリンをより多く売ることで利益を上げようとするのではないだろうか?”
そうは言っても、売る側も商売ですから安く売って原価割れしても損をしてしまうだけです。ガソリンの供給量が少ないわけですから、特定の値段よりも下げると利益が手元に残らなくなります。
これが勘違いだと思うのですが、自由競争によってあらゆる商品が適正価格に落ち着くというのは誤解であり、経済学が大きく批判されている理由のひとつでもあります。
どの商品に競争による価格の安定化が働くかは、経済状況によっても異なります。ただ、大まかに言って生活必需品になればなるほど競争をしても価格は安定せず、買い手は売り手の値段で取引せざるをえなくなります。
今回、エネルギー価格の上昇は、経済学の黄金律を疑う良い機会である気はしているのですが、いかんせん生活に余裕がないと、なかなか気づけないものです。
今回の短い記事で、市場の自己調整は起こらない場合があるということが1人でも多くの人に気づくきっかけになれば幸いだと思っています。
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